Exhibition
特別展示室 「全集」第6回2025.5.30 FRI

「探偵小説全集」春陽堂

多様な全集が刊行されるなか、ユニークな企画が際立つ

 大正末期からの円本ブームのなかでミステリー関連の全集もいろいろと企画された。平凡社の『ルパン全集』、改造社の『日本探偵小説全集』、博文館の『世界探偵小説全集』、平凡社の『世界探偵小説全集』などだが、19296月から翌年10月まで春陽堂から刊行された全20巻の『探偵小説全集』は、内外の作家を織り交ぜた構成がユニークだった。

  • 濃い青色の表紙の全集は、2冊ずつ化粧箱に収められていた。

  • 表紙を開いた扉ページは味わいのあるデザイン。

 ①江戸川乱歩

 ②小酒井不木

 ③大下宇陀児

 ④甲賀三郎

 ⑤横溝正史

 ⑥岡本綺堂

 ⑦黒岩涙香

 ⑧ウォレース

 ⑨ドイル/サッパア

 ⑩ルブラン

 ⑪ドゥーゼ/ローゼンハイン

 ⑫ルルウ

 ⑬ヴァン・ダイン/ポオ

 ⑭オーモニア/ランドン

 ⑮マッカレー/ビーストン

 ⑯ラインハート/オルツィー

 ⑰ボアゴベイ

 ⑱ガボリオ/ホフマン/アンドレ・ド・ロルド

 ⑲ウエルシーニン/フレッチャー

 ⑳ホワイト/アルデン/マッカリー/ハート/ドイル/グリーン/ワイスル/ウイリアムズ/ローマー

 編集にあたったのは甲賀三郎とのことだ。

 また、挟み込まれていた「月報」が、当時の探偵小説界の様子を伝える貴重な資料となっている。

  • 「月報」には様々な執筆者の原稿も掲載され、読み応えがある。

  • 編集した甲賀三郎の「あいさつ」が「月報」に掲載された。

  • 江戸川乱歩がガストン・ルルウ「黄色の部屋の秘密」を讃える一文も「月報」に掲載。さらに、同作品についての乱歩と甲賀三郎の会話が「文学時代探偵小説座談会」より抜粋引用されている。

  • こちらは平林初之輔が、探偵小説作家としての小酒井不木を評したもの。雑誌「新青年」より引用されている。