
香山滋特集(3)
香山滋と映画『ゴジラ』
2016年公開の『シン・ゴジラ』や2023年公開の『ゴジラ-1.0』がヒットして、映画界における「ゴジラ」のパワーがいまだ衰えていないことが、いや、ますますパワーアップしていることが実感できた。その「ゴジラ」がスクリーンに初めて登場したのは、1954年11月に公開された東宝製作の『ゴジラ』である。そしてその原案を執筆したのが香山滋だった。
香山滋は旧制中学在学中から古生物に興味を持っていた。デビュー作のテーマである「オラン・ペンデク」は、スマトラ島に棲息する未知の人類だったが、その後も「獣人ゴーラ」、「生きているマンモス」、『怪龍島』、「半爬虫人」といった作品を発表している。その香山滋のもとにプロデューサーの田中友幸から「G作品」と題された企画が持ち込まれたのは1954年5月中旬だったという。
その年の3月のビキニ環礁での水爆実験で、放射能の恐ろしさがますます認知されていた時期だった。水爆が生んだ怪獣という設定の斬新さと、円谷英二特撮監督による迫力ある映像が相まって映画『ゴジラ』は大ヒットした。小説版の『怪獣ゴジラ』が岩谷書店から刊行されたのは1954年10月である。
初の小説版『怪獣ゴジラ』。1954年10月刊行、岩谷書店。
『怪獣ゴジラ』の見返しに入れられた著者のサイン。
「宝石」1954年12月号の表紙。
同号の「宝石」に映画『ゴジラ』の広告が掲載された。
翌1955年4月にはやはり香山滋原作を謳って『ゴジラの逆襲』が公開され、そして「ゴジラ東京編」と「ゴジラの逆襲大阪編」を収録した『ゴジラ』が1955年7月に島村出版から刊行された。だが、じつは作者の生前には活字としての「ゴジラ」はあまり注目されていない。スポットライトが当てられるのは、竹内博ら熱心な香山研究家が再評価に尽力した、作者没後の1976年以降と言えるだろう。
1955年7月、島村出版から刊行された『ゴジラ 東京 大阪編』。
1976年9月刊行の『完全復刻ゴジラ/ゴジラの逆襲』(奇想天外ノヴェルス)。
1979年8月刊行の『小説ゴジラ』(奇想天外社)。
1983年10月刊行の『怪獣ゴジラ』(大和書房)。
1999年10月に実業之日本社より、1954部限定で出版された『ゴジラ1954』。映画第1作『ゴジラ』のカラー宣材や、新聞・雑誌に載った広告・記事などをまとめた完全資料集成。『怪獣ゴジラ』の復刻本も付いていた。