Exhibition
特別展示室 「全集」第3回2024.9.17 TUE
「小酒井不木全集」改造社
小説から医学の研究まで、幅広い著作を収める
亡くなった翌月(1929年5月)に改造社から全集がスタートしたことからも、小酒井不木への注目度が分かるだろう。しかも、当初全8巻の予定が12巻に増巻され、さらに15巻に、そして最終的には全17巻になったのだから驚かされる。その内容は以下に示すが、作家活動だけではなく、医学者としての研究成果も網羅されている。ちょっと地味な装釘がまた不木らしい。
第1巻の口絵に入れられた不木の写真。キャプションには「書斎にて(大正十四年四月)」とある。
第1巻 殺人論及毒と毒殺
第2巻 犯罪文学研究及西洋探偵譚
第3巻 探偵小説短篇集
第4巻 探偵小説長篇集
第5巻 闘病術及学者気質
第6巻 生命神秘論及不木軒随筆
第7巻 医談女談
第8巻 病間録及日記
第9巻 探偵小説中篇集
第10巻 趣味の探偵談
第11巻 三面座談及タナトプシス
第12巻 文学随筆及書簡
第13巻 探偵小説短篇集
第14巻 探偵小説集
第15巻 闘病余録及断片
第16巻 探偵小説短篇集
第17巻 探偵小説中篇集
第3巻の口絵。上写真は「愛知一中卒業の頃」、下写真は「東京帝大一年の頃」。
編集に当たったのは不木の秘書のような立場にいた岡戸武平で、江戸川乱歩が出版社との交渉に当たった。乱歩の『探偵小説四十年』によれば春陽堂も全集出版にかなり熱意を示したとのことである。